浅い充実感(7)生活時間の充実

生活の場での充実感

しかし高度経済成長期以降を振り返ると日本人の中で充実感が1970年代後半から四半世紀の間に伸びた領域もあります。[1]https://www.env.go.jp/council/21kankyo-k/y210-04/ref_15.pdfそれは、生活の場での充実感です。ゆったりと休養している時、友人や知人と会合・雑談している時、趣味やスポーツに熱中している時、この3つが上昇したというのです。プライベートにおける充実感が拡大したのは、その期間にアイデンティティーの重心が仕事場からプライベートにシフトしていったと言えるのかもしれません。現在ではこうした領域における充実感は内閣府の調査に出てくる7か国間で大きな差は見られないのです。

こうした生活の場での「充実感」と、本来の意味で言うところの深い自己の希求や素質の充足としての「充実」との間に差があることを視野に入れておく必要があります。つまり日本人の現状では、深い部分は充足をあまり感じてはいないけれども、もっと浅い部分の充実は、経済成長を果たした後に、他国の人々と近いレベルまで感じることができるようになったと言えるのではないかと思います。そして、まだ未発展のその深い部分に、「他者貢献」も眠っていると言えるのではないかと、データから見て、わたしは思います。

参照

参照
1 https://www.env.go.jp/council/21kankyo-k/y210-04/ref_15.pdf