希望の性質 ⑵ 掘り出す開拓者

能力との関係

その際、希望は意義ある目標とその達成に向かう行動を発達させていく能力を持っていることを前提としています。[1]Edwards, L. M. & McClintock, J. B.(2018). A cultural context lens of hope. In M. W. Gallagher and S. J. Lopez (Eds.). The Oxford Handbook of Hope (pp. 95-104). Oxford, England: Oxford … Continue reading 実際にある調査で回答者らは、希望と無謀な夢の違いは、希望の場合、途方もなく非現実的なものを目指すのではなく、ある程度の実現の現実性があるものに対して持つものであると答えました。[2]Averill, J. R., Catlin, G., & Chon, K. K. (1990). Rules of hope. Springer-Verlag Publishing. 目標とするものを求める過程は不確実性を必ず伴うが、あまりに現実的でないものは希望の対象にはならないと言うわけです。

そうであるとすると、このことは、希望を持つとき、目標そのものの他に、その達成のために必要な自分の内側にある能力を何かしらの形で参照しており、計算とまでは言えなくても、自分の中にかんばれば出来そうな何かを感じることを前提としていることを示唆しています。実際のところそれに類する自己評価のシステムがあることがスナイダーの希望理論で確認されています。希望は自分が全体として主体性や筋道を考え出す能力があるか、また具体的な目標達成に向かってそれらができるかを評価する一つの信念のシステムであると、スナイダーらは考えています。[3]Snyder, C. R., Feldman, D. B., Shorey, H. S., & Rand, K. L. (2002). Hopeful choices: A school counselor’s guide to hope theory. Professional School Counseling5, 298-307.

地下に埋蔵する金属を嗅ぎ分ける探知機のように、自分の内面にある何かしらの能力を参照して、その能力を開花、発揮、動員していく働きを希望は持ちます。ここが、前述の内面を掘削する要素であるのです。そのことから、内面から発掘して動員する意志を必要としない生き方や環境にあっては、希望の出番はあまりないと言ってよいでしょう。

主体性をもって内から出る「これを成し遂げたい」という目標意識、またその際、自分の内にある潜在能力を引き出し開花させ、目標達成に動員しようとする意識、この内面掘削的な動きが希望です。前から見てきたように、この内なる探求は将来の探求でもあります。その意味で希望は、潜在能力と将来を切り拓く開拓者であると言えます。

参照

参照
1 Edwards, L. M. & McClintock, J. B.(2018). A cultural context lens of hope. In M. W. Gallagher and S. J. Lopez (Eds.). The Oxford Handbook of Hope (pp. 95-104). Oxford, England: Oxford University Press.
2 Averill, J. R., Catlin, G., & Chon, K. K. (1990). Rules of hope. Springer-Verlag Publishing.
3 Snyder, C. R., Feldman, D. B., Shorey, H. S., & Rand, K. L. (2002). Hopeful choices: A school counselor’s guide to hope theory. Professional School Counseling5, 298-307.