浅い充実感(2)充実感とはアイデンティティーの実感

充実感(英語ではfulfillment)は、質問票で調査するときは、「生きがい」、「生きている実感と喜び」、「生活のはりや楽しさ」、「生まれてきてよかったと思う気持ち」などが感じらるかどうかで測ります。充実感というとき、人は単に欲求の満足があるということよりも深いものを感じているようです。これについて西平氏は充実感とはアイデンティティーの実感であると言いました。[1]西平直喜 (1973) 青年心理学 共立出版 つまり自分は何者であるかという深いところの認識が充足されるときに、「充実」を感じるというわけです。

英語圏でのself-fulfillmentという言葉も、深い充足として捉えられています。それは自己の最も深い希求または最も価値ある素質を成就させること、自己の内の最強・最善のものを展開することであり、したがって究極の目標となるものであるとゲワースは言っています。[2]Gewirth, A. (2009). Self-fulfillment. Princeton University Press.

質問票で測られるときの充実感の気分は、①自立・自信・主体性、②人との連帯、③使命感とその達成感(また人生の目標・希望)があることと関わっていることが、大野氏の研究によりわかっています。[3]大野久(1984) 現代青年の充実感に関する一研究 教育心理学研究32 12-21そうでなければ、毎日の生活はうつろに感じられるというのです。①と③はこれまでのページで見てきた項目と関連していますね。これら①②③はアイデンティティー=「自分は何者であるかという認識」と関連していると言えるかもしれません。

内閣府の調査で、他国と比較して際立った低さであるのは9項目中3項目です。それは「ボランティア活動など社会のために役立つことをしているとき」「仕事に打ち込んでいるとき」「勉強に打ち込んでいるとき」の充実感です。

<次ページへ 「仕事場での充実感」>

参照

参照
1 西平直喜 (1973) 青年心理学 共立出版
2 Gewirth, A. (2009). Self-fulfillment. Princeton University Press.
3 大野久(1984) 現代青年の充実感に関する一研究 教育心理学研究32 12-21