可能自己
自己肯定感、自己尊厳と内的統制、つまり「やればできる」という気持ちがつながっていることは直感的に理解できますね。さて、これまでに出てきたことと似ていますが、もう一つ大事な概念として「可能自己」(Possible Self)という心理学の概念を紹介します。可能自己とは、将来の成功している自己像のことです。例えば「自分はよい大学に合格している」というようなものです。絵に描いた像としてだけではなく、そのようになっていこうとする動機もそこに関わっていくものとされています。[1]Markus, H., & Nurius, P. (1986). Possible selves. American Psychologist, 41, 954–969.
可能自己はその人の発達の枠組みやガイドとして機能するものとされています。前の投稿で書いたとおり、将来の成功している自己像と言えば日本人に低い項目の一つですね。日本人の場合は将来自分が達成、成功している姿を前向きに想像するのは難しいことがわかっていました。つまり可能自己が弱いと言えます。
この可能自己と自己尊厳、内的統制は互いによく関連した概念です。ここで整理しておく大事なことは、将来への前向きな気持ちと、自分の内に良い何かがありそれを発掘できるとの捉え方が関連しているということです。[2]Nurmi, J. (2015). Thinking About and Acting Upon the Future: Development of Future Orientation Across the Life Span. In Strathman, A. & Joireman, J. (Eds.) Understanding Behavior in the Context … Continue reading「将来」と潜在性つまり「内」に潜む能力や性質が関係している、つまり将来への伸展・発達を内に求めるという事実です。[3] Nuttin, J. R. (1964). The future time perspective in human motivation and learning. Acta Psychologica, 23, 60–83. “the future is our primary motivational space” p63参照 将来の自分に明るい信念を持っている人たちが、現在の自分の内面に長所や尊厳を見出せるというのは、このことがわかれば不思議はありません。
参照
↑1 | Markus, H., & Nurius, P. (1986). Possible selves. American Psychologist, 41, 954–969. |
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↑2 | Nurmi, J. (2015). Thinking About and Acting Upon the Future: Development of Future Orientation Across the Life Span. In Strathman, A. & Joireman, J. (Eds.) Understanding Behavior in the Context of Time: Theory, Research and Application, 31-58. New Jersey: Lawrence Erlbaum Associates, Inc. |
↑3 | Nuttin, J. R. (1964). The future time perspective in human motivation and learning. Acta Psychologica, 23, 60–83. “the future is our primary motivational space” p63参照 |