自己肯定より自己批判(3)内面と将来

現在の自己肯定と将来の良い自己像の関係

さて、自己否定もそれなりに(人とつながった)自分のよさを実現するための方法としてなされていることがあるということはわかりました。それで欧米文化とは違うあり方として良しとする見方もあるでしょう。ただ、ここではそのことで何の機会を失っているかを検証しておきたいと思います。

ここで確認したいことは、内面の良さを認めることと、これまで書いてきた、内面に眠る自己を将来に向かって引き出す意欲や信念との関連です。

自己尊厳は自己肯定感とほぼ似たものですが、これと将来への前向きな志向との間に関わりがあることが研究されています。つまり自己尊厳が低い場合、将来に対する自己の否定的なものの見方をする傾向があり、反対に自分の将来に肯定的なものの見方をする場合、高い自己尊厳のある傾向があることがわかっています。[1]Lyu, H., Du, G., & Rios, K. (2019). The relationship between future time perspective and self-esteem: A cross-cultural study of Chinese and American college students. Frontiers in Psychology, 10, … Continue reading

そして以前に、もし自分の内に統制の所在があれば、「自分が努力すれば成功を結果として見ることができる」という信念と行動パターンが生まれるので、未来志向につながることを書きました。それに関連して、内的統制があることは、自己肯定感、自己尊厳に深く関連していることがわかっています。[2]Saadat, M., Ghasemzadeh, A., Karami, S., & Soleimani, M. (2012). Relationship between self-esteem and locus of control in Iranian University students. Procedia – Social and Behavioral … Continue reading つまり、自分の内面の良さを認める高い自己肯定感・自己尊厳の背後には内的統制があり、それは、自己を開拓していく未来志向と結びつく傾向があるということです。

すると、どういうことになるでしょうか。

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参照

参照
1 Lyu, H., Du, G., & Rios, K. (2019). The relationship between future time perspective and self-esteem: A cross-cultural study of Chinese and American college students. Frontiers in Psychology, 10, 1518.
2 Saadat, M., Ghasemzadeh, A., Karami, S., & Soleimani, M. (2012). Relationship between self-esteem and locus of control in Iranian University students. Procedia – Social and Behavioral Sciences, 31, 530-535.